もふもふになっちゃった私ののんびり生活
 翌朝はいつもより遅めに目が覚めた。家の中ということで風も吹きこまないし、隙間風もないしでとても快適に眠れたようだ。

 もう四つ足の姿には慣れたつもりだったが、家の中にいると安心感がとてもあって、やはり意識的にはまだまだ人間のままなんだな、と苦笑してしまった。
 安全だと分かっていても、外で寝るのはやっぱりどこか不安があったのだろう。

 ふわーあ、とあくびをしつつ尻尾をピーンと伸ばしてゆっくりと伸びをしてから頭をぷるぷる振って眠気を飛ばし、尻尾をゆるーく振りながらのんびりと部屋の中を見回す。

 ソファとその前の机はまだ手が届くが、ダイニングの椅子など、当分座るのも無理だ。台所も調理道具なども揃っていても台の上には手が届かない。
 人化してもまだ幼児なので、この家で人として暮らすのは当分先になるだろう。

 まあ、のんびりでいいよね。この家も、のんびり暮らしたいっていう私の希望の元神様が用意してくれたのだし。

 とりあえずは朝ご飯だ!

 いそいそと扉をくぐって外に出て、また果樹の方へ向かう。
 満足するまで果実を食べて、しっかりと口の周りをキレイにしたら、家へと戻って鏡の前へ行く。

 目をつぶり、昨日の精霊樹に抱き着いた時のことを思い出しながら人の手足を頭の中に描くと、昨日と同じように身体が温かくなり、ゆっくりと変化して行った。

「ふう。できちゃ!」

 よいしょと四つん這いの状態から立ち上がり、ぷるぷる震える足で鏡を覗き込むと。

「おおーー。きゃわいい!」

 鏡に映っているのは全裸の一歳から二歳くらいの女の子だ。四つ足の時よりも身体は倍くらいにはなっている。

 まっすぐでサラサラな肩くらいの長さの髪は灰色よりの艶の少ない銀のように見えるから、大きくなるにつれて色が変わりそうだ。肌は透き通りそうな白さで、蒼い目はまん丸で大きく、唇はピンクでぷっくりしていた。
 顔立ちは彫も深く鼻も高めで、前世の面影は全くなかった。

 うん、凄くかわいい。しかも、頭の上に大きな耳にふっさふさの長い尻尾まであるんだよね!なんか、完璧じゃない?

 身体は幼児特有のぷにぷにでどこもかしこも柔らかそうだった。……確かに果実は食べ過ぎかもしれないけど、太ってる訳じゃないからね!多分……。

 ぷにぷにのほっぺを触ってみると、もっちりとしてとても気持ちがいい。思わず夢中になって触っていたら、バランスを崩して頭から倒れそうになってしまって、慌てて尻もちをついた。

 子供って頭が大きいからバランスが悪くて頭から転びそうになるんだよね。

 ……四つ足の時もよく転がるのは、幼獣だから頭が大きいからなのかな?……なんとなく私がどんくさいからだ、と心の声が言っている気がしたけど、聞こえないふりをした。

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