【完】イミテーション・シンデレラ
昴の優しさは、私の涙腺を緩くさせる。 だから嫌いなの。誰にでも優しい男は…。
私が弱音なんか吐いちゃったら、昴はいつだって優しくしてくれる。 そんなの知ってる。
「第二の人生はこれからゆっくり考えて行きたい。 結婚なんてありかもね」
「けッこん…?!」
冗談で言ったつもりなのに、昴の声が上ずったのが分かる。 焦った様に視線をこちらへ向けて、大きな目を見開く。
「アイドルが卒業して、結婚するなんてありがちな話じゃない。
有名な経営者とか、会社社長とか…。 同じ芸能人は互いの仕事が分かり合いすぎて嫌だから
適当な金持ちと結婚して…もう、芸能界からは引退したいかな…」
冗談と本気、半分ずつ。 疲れていた。 競争する事も、顔も知らない人から、振る舞いひとつで叩かれる事も。
才能がないって批評されて、自己肯定感は薄れていく。 芸能界は厳しい。 第二の人生は普通に結婚して、平凡な家庭に入るのも悪くない。
まだ若い。今ならばやり直せる。 私は結婚したらすっぱりと芸能界から足を洗うつもりだった。 まあ…現在予定も相手すらも居ない訳だが。