【完】イミテーション・シンデレラ

「たく、信じらんねぇ。
忘れ物するとかッ」

「だって真央が帰って来て早々急かすから…!」

「は?何だよそれ、俺のせいって訳かよ」

「そういう事を言ってる訳じゃないけど!そんなに怒らないでよ!ムカつくなぁ!」

喧嘩をしながら個室に入って来たのは、真央と静綺だった。 案内してくれた店員も呆れ顔である。

真央はブスッとした顔をしていて、その横で静綺がフンッと顔を背ける。 けれど私達の顔を確認した瞬間、静綺は顔をくしゃっとさせて笑う。

静綺の笑顔はほんの少しだけ、梨々花と重なる。

「岬さん…!久しぶりですッ」

どうしてどいつもこいつもここまで人懐っこい笑顔を向けられるのか。

純粋無垢。その言葉がぴったりと似合う。 私だってテレビの前でならば…アイドル南条岬を演じている時はこんな素敵な笑顔を作れる。

だけどプライベートでは絶対に無理だ。こんな風に素直に嬉しさを表現できない。

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