【完】イミテーション・シンデレラ
「私はアイドルも卒業したし、恋愛は解禁だもの!
これからは沢山恋愛して、すっごく素敵な人と結婚するの!」
グラスを掲げながら、宣言すると
「…アイドル時代から男と付き合ってたじゃねぇか…」
真央がぼそりと呟く。事実だけど、あんたがそれ言う?!
地下アイドル時代の私に手を出したのは、あんたでしょう?…まあ、私が勝手に好きになって猛烈アプローチをしたんだけど。
「真央、なんか言った?
昴!酒!酒をもってこーい!
今日はお祝いなんだから潰れるまで飲むぞーッ!」
「もう、潰れるまで飲んだら介抱するの俺の役目なんだからさ。」
「うっさい!今日の主役は私!南条岬なの!
静綺もグラス持って!飲むよー!
アイドル卒業おめでとう!私!」
「は、はい!」
楽しくて、珍しくはしゃいだ。
記憶に残っているのは、高級なシャンパンを注文して、それを飲んで真央が早急に潰れた事。
ふわりと頭が回る。視線の先、真央を介抱する静綺をいつも以上に優しく見つめる昴の穏やかな表情。
いつからそれが切なく映る様になったのかは、定かではない。 振り払うようにはしゃいだ。