【完】イミテーション・シンデレラ
「らーかーら、私は社長と結婚するろー!
アイドルは卒業したらお金持ちと結婚するのがデフォなのら!」
「岬さんと結婚したい人って全国に沢山いると思う…」
「きゃははは、静綺よく分かってんじゃない~そぉ~わたしモテるんらもん~
絶対に金持ちと結婚して、幸せになるのー」
薄れゆく意識の中で、昴が何かを言っている。 でもそれはもう私の耳には届かなくて。
お酒の酔いが回って、いつの間にか意識を手放していたんだ。 最後に耳に残っていたのは、昴の甘くて低い声の囁きだけ。
―――――
「ん…んぅ……」
体が鉛のように重い。 頭がガンガンと何かに打たれているように痛い。
ゆっくりと目を開くと、カーテンの隙間から光が差し込んでいる。 もうすっかり朝のようだ。
でも、もうちょっと。 なんせ体がだるくて仕方がない。 今日はオフも貰っていて、仕事もない。もうちょっと眠ろう。
紺色のカーテンはゆっくりと風で揺れている。 もう~…寒いなぁ~。ん?紺色のカーテン? うちのカーテンは、ピンクの花柄のはずだったが?
朦朧としていた意識がだんだんとはっきりとしてくる。 寒い、と意識した途端に気が付いた。私、洋服着ていない。裸だ!上も下も下着を身に着けていない。
サーっと血の気が引いていくのが分かった。 まだまだ覚醒しない意識の中、ゆっくりと横に寝返りを打つ。