【完】イミテーション・シンデレラ
知らないベッドの中で、よく知っている香水の匂い。
横には目を瞑っている昴の憎らしい程整った寝顔。
逞しい二の腕を枕にしている。 勿論隣で眠っている昴も裸だった。 「ひッ!」 思わず間抜けな声を上げてしまった。
見覚えのない部屋の、寝室。大きなベッドの中で身を寄せ合うふたり。 ふたりとも裸で、男女がベッドで共に過ごす。
硬直した体は動けない。ジッと昴の眠っている顔を茫然と見つめていると、突然彼が眼を開けた。 まだまだ寝ぼけ眼。そして少し掠れた声で唸ってから、「おはよ…」と言った。
この状況で意味する事はただひとつ。
私やらかしてしまった。 まさか昴とエッチしちゃうなんて、やっぱり昨日の私はどうかしていた。
おはよ、と言ったのに再び昴は目を閉じて、寒いと言いながら私を両手で抱きしめた。 昴の香水の香りで二日酔いの頭は更にくらくらとする。その場で動けなくなり、ただただ抱き枕にしかなる事しか出来なかった。
最悪だよ。昴とだけはこんな関係になりたくなかった…。嘆いてももう遅い。幕は開けてしまったのだ。
これがまさか、切ない片思いの始まりになるなんて。