【完】イミテーション・シンデレラ
床に座り込んだまま、キッと昴を睨みつける。 すると不思議そうな顔をした。
「下も貸してよッ!このままじゃあ立てない!
そんであんたも何か着なさいよ!目のやり場に困る!」
くすっと妖艶な笑みを浮かべると、その場にしゃがみこんで私の顎を掴んだ。
ちょっと…。
同じ目線にドアップで、半裸の昴の姿。 何て良い体をしているのかしら…。
引き締まっていて痩せ型なのに、程よく筋肉はついている。 スタイルは抜群に良い癖に、共演した番組で「筋トレってした事ないんすよぉ」とヘラヘラ笑っていた顔を思い出す。
私は昨日、この体にこの腕に本当に抱かれたと言うの…?
「今更恥ずかしがることないでしょう? 昨日の岬可愛かった」
よくもまあいけしゃあしゃあとそんな台詞が吐けるものだ。 顎を掴む手を振り払い、再び昴を睨みつける。
こっちは昨日の記憶は一切ないのだ。 記憶がなければ、それはなかった事と同じだ。
「うるさい!死ね!
いいから早く何か着る物用意しろ!」
ぷっと小さく吹き出すと、立ち上がり再びクローゼットの中を物色すると黒色のスウェットのズボンをこちらへ投げつける。
そして私を置き去りにしたまま、寝室のドアを開けてどこかへ行ってしまう。