【完】イミテーション・シンデレラ

そういう問題ではない。そういう問題では…。
 何をやけにすっきりとした顔をして、太陽の光を拝んでいると言うのだ。
まずはこの状況について整理させて欲しい。記憶なんか一切ないんだから。

「わ、ワンピースは?!私の!
き、昨日着ていた!」

しゃがみこんだまま昴を睨みつけると、何かを思い立ったようにクローゼットを開く。
そして中から大きめの黒いティシャツを差し出す。

「そうじゃない…!私の、ワンピース!早くしてよッ。こんな格好で居るの恥ずかしいんだから!」

すると、頭の上からティシャツを無理やり被せられた。
ふわりと昴の匂いが鼻を掠める。

「覚えてないの? 岬昨日ゲーッて吐いて自分でワンピース汚しちゃったんじゃん。
今洗濯機の中に入ってるよ。
乾燥機で乾かしてやるから、取り合えず俺の服着ていなよ。」

そ、そんな失態を?! 覚えていないわ…。全く。
昴の顔すら見ることも出来ずに、渋々と被せられたたティシャツを着直す。

昴は大きい。私とは身長差が30センチ近くあるから、貸してくれたティシャツはぶかぶかで
ティシャツと言うよりは、ティシャツワンピの様な形になった。 それでも立ち上がる事が出来ない。

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