【完】イミテーション・シンデレラ

カップに口をつける。 甘いココアが二日酔いの体に染み込んでく。

「岬、今日仕事は?」

「…今日はオフだけど…」

「そっか。俺は午後から仕事なんだけど」

そりゃそうだろう。
売れっ子俳優だ。 この数年オフなんて数えるくらいだろう。
映画やドラマに引っ張りだこ。そのくせに昴は仕事を選ばないと業界内では有名だった。

売れない時代が長かったから、どんな仕事でも断りたくない。いつかのインタビューで見た事がある。

だからテレビ局側からしてみても、使いやすい。その上、品行方正な彼は番組のプロデューサーやお偉いさんだけじゃなく、下っ端のスタッフからも受けが良い。

10代の頃今の事務所にスカウトされてから、簡単に売れた訳じゃない。長い下積みがあって人気俳優になった。

密かにそんな努力家な一面は尊敬している。

「そう…。じゃあ、私早く帰らなくっちゃ。」

「そんな急ぐ必要ないよ。まだ9時だし。岬が良かったらゆっくりしていってよ。
朝ご飯でも一緒に食べに行こうか?」

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