【完】イミテーション・シンデレラ
「ちょっと!服くらい着なさいよ?! 風邪ひいちゃうでしょ?
あんたの代わりはいないのよ?
ほら!立ち上がる! 珈琲なんて呑気に飲んでないで、何か羽織りなさいよ」
「あ。でも岬のワンピース乾燥機から取り出さないと」
「そんなの私がやっておくから!着替えてきなさいよ!
あんたは大滝昴、風邪でもひいて仕事が出来なくなったら沢山の人が迷惑するのッ!」
無理やり立ち上がらせ、寝室まで背中を押す。
直ぐに洗面所に行って、自分のワンピースを乾燥機から取り出す。
洗面所の隣にはバスルームがある。 ちらりと覗いて見たら、散らかっている様子はなし。
あんなに忙しいのに、よくここまで家を綺麗に保てるものだ。 しっかりものはどこまでもしっかりものらしい。
けれど覗き見したバスルームには、明らかに女物と思われるシャンプーがあって、きちりと片付けられた洗面所にも女性物の化粧水や乳液がある。
美容液まであるから、まさか昴が使うとは思えない。 ズキッと胸が痛む。 洗面所の鏡に映った化粧のはがれかけた自分の顔は偉く冴えない。
これは二日酔いのせいではない。昨晩化粧を落とさずに眠りに落ちたせいでもない。 私はショックを受けているのだ。 ちらほらと見える、顔も知らない女の影に。