かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


語尾を上げて聞いてくる酒井部長に、内心うんざりしながら笑顔を作った。

「少し軽率だったのかもしれないですね。以後気をつけます。私、もう戻りますのでこれで」

いつまでも引き下がってはくれなそうだから、やや強引に話を終わらせた……つもりだったのだけれど、酒井部長が続ける。

「認めないってことは、結婚の話はまだ出ていないのかな」

空気を察知するセンサーが壊れているんじゃないだろうか。
そう思いながら見ている私の心の内なんて、やっぱりなにも気付いていない様子の酒井部長がじっとりとした笑みを浮かべる。

「まぁ、桐島くんも相沢さんも若いからね。色んな相手を試してみた方がいい。何事にも相性ってやつがあるから」

そこで一度区切ったあとで、聞かれる。

「ちなみに、相沢さんは経験は多い方なのかな?」

何事にも相性だとか言いだしたときから、セクハラ臭はぷんぷんしていた。
雰囲気も目つきもなんだかおかしかったから。

でも……まさか、ランチ時にこんなとんでもない質問が飛んでくるとは思いもしなかった。

しかも同じ職場の私相手にどういう神経をしているんだろう。
紗江子の言っていたとおり、危機管理がなっていない。


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