かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


紗江子に言わせると私は今モテ期らしい。

『なんでか知らないけど、やたらと出逢いがあったり声かけられたりする時期があるんだよ。澪はたぶん、今その渦中だよね。桐島さんしかり、クズみたいな元彼しかり、酒井部長しかり』

桐島さんとそのふたりを並べるのはやめてほしいと心底思った。

十九時を回った大通りは人が多く、ビジネスマンが立ち止まっている私たちを邪魔そうに見ながら抜かしていく。

黒田はそんなこと気にもしていない様子だった。
スーツ姿だし、黒田も仕事終わりかまだ途中なのだろう。

「っていうかさ、いい加減、俺の着信拒否設定、解除してくれない? 連絡がとれなくて困るんだよな」

そう言ってくるってことは、最近、私に連絡しようとしたのか。
電話をかけなければ、私が未だに着信拒否の設定をしていることに気付かないはずだ。

いい加減しつこいな……と考えながら無視したまま一歩踏み出す。
このまま逃げられたらラッキーくらいにしか思っていなかったにしても、腕を掴んできた手にはうんざりした。

「話しかけてるんだけど」

黒田が私の腕を掴んだまま聞いてくる。
そこまで力が入っているわけではないから痛くはないけれど、離してくれる気配がなく体のなかをザワッとした不安が撫でた。

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