かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


『言っておくけどな、俺が元気な体を手に入れたらおまえらなんか瞬殺だからな! あっという間にボッコボコにしてやる!』

フラフラしながらそんな啖呵を切る陸を、何度庇ったかは数えきれない。

幼稚園の頃の〝泥団子粉砕事件〟の時も、三年生の時の〝美希ちゃんの机に落書き事件〟の時も、五年生の時の〝佳菜ちゃんの消しゴム真っ二つ事件〟の時も。いつも弱い体で先頭に立って怒っていた。

『誰だよ! こんな卑怯なことしたやつ!』

陸はいつだって正義感が強くて……そして、残念ながら体が弱かった。

私は物心ついた頃からそんな陸を庇うクセがついていたから……だから――。

そこまで考えて気持ちが沈みそうになっていた時、陸が言う。

「退院してからもさ、たまには会ってたんだよ。でも、高校途中くらいからは自然とそういうのもなくなってたから、少し前に再会した時には本当に驚いた」

陸がそう話すのを聞いて、そういえば桐島さんの話をしていたんだっけと思い出す。

「昔、澪も会ったことあるかもな。俺が入院してた時、しょっちゅう見舞いきてたし」
「会ってたとしても、もう十年以上前のことでしょ。私は陸と違って友達になったわけでもなんでもないんだし、普通覚えてないよ」

うどんを箸ですくいながら「で、その桐島さんにちゃんと謝った?」と聞くと、陸は苦笑いを浮かべた。


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