かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「俺、入院長かったから暇でさ。調子のいい日は院内ぶらぶらしてて、その時に話しかけたのがきっかけで友達になったんだよ。それから、桐島は暇な時には俺のとこに顔出してくれたからよく遊んでた」
「へぇ……でも、親がお医者さんなら桐島さんもそういう道に進みそうなイメージがあるけど、そうでもないんだね」

開業医とかなら、自分の跡を子供に継がせたいという希望がありそうなものだと思ったのだけれど、大学病院ともなるとそんな私情は関係ないのかなとひとり納得する。

あれだけ有名な大学病院の副院長なんて、簡単に座れる椅子じゃない。実力はもちろん、政治力も必要そうだ。

それでも、桐島さんが医学の道に進んでいればそれも夢じゃないように思うのは彼が仕事ができると知っているからだ。
どの世界でも成功しそうなイメージがある。

「昔はそんな話もしてたんだけどな。再会した時に銀行に勤めてるって聞いた時には驚いた。まぁでも、仕事の内容聞いたら医者と同じくらい難しそうだったし、なんか合ってるなって思ったけど。投資アナリスト……だっけ? すごいよな。ちょろっと聞いたけど、俺には絶対できない感じだった」

兄の陸は、私の二歳年上の二十六歳。性格はそこ抜けに明るく、顔立ちはそこそこ。彼女が長く途切れないし、現在の彼女である紗江子から言わせれば〝わんこ系でカッコ可愛いの極み!〟なので、身内びいきではないんだろう。

昔は薄く小さかった体も、大学の頃から徐々に健康的になり、今は身長体重ともに成人男性の平均値内。
中学まであれだけ入退院を繰り返していたのが嘘のように元気だ。

もっとも、陸が性格だけ強気で明るいのは昔からなので、体が不調でへろへろの時でも気持ちだけは勢いがよかった。


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