東京ヴァルハラ異聞録
「……間違いないな。あれは結城昴だ。それにしても良くわかったもんだね」


「先日、この近くを通った時に、妙な感覚がしたんだ。その感覚が、私の記憶を呼び覚ましたという所かな」


「物は言いようだよね。俺は創造主だったから、記憶の消去なんてなかったし。クイーンもやる事が中途半端なんだよな」


俺が校門から出たのを確認していた、バイクに乗っている男女。


あれは誰だろうと思いながらも、誰であっても俺には関係がないだろうなと、家に向かって歩いた。


だが……。


「結城昴だな。お前を探していた」


バイクが俺の横にピタリと停まり、後ろに乗っていた男が、俺に木刀を放り投げたのだ。


「えっ!?な、なに!?」


慌ててそれを掴んだ瞬間、男がバイクから飛び降り、同じように木刀を構えて、それを俺に向けたのだ。


「俺はただの会社員だ。お前の為に、お節介だとはわかっているけど記憶を呼び覚ましに来た。それを構えろ」


一体、何がなんだかわからない!


無視して逃げようとしたけど……何故か俺は、木刀を構えて、会社員だと名乗った男と対峙していた。


それに、不思議と心が落ち着いている。


何がなんだかわからないけど……過去にもこんな事があったような。


そんな気がしていた。
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