東京ヴァルハラ異聞録
「そうだ。記憶がなくても、魂に染み付いた戦い方は、そう忘れるもんじゃない。お前は、約束を果たさないまま、どれだけの日を過ごした」


「や、約束!?俺、あなた達と何か約束をしましたか?」


いや、顔はわからないけど、こんな人達と約束をした覚えはない。


変ないちゃもんを付けて、カツアゲでもしようっていう魂胆だろう。


「私達ではない。お前は、自分が愛した女の事も思い出せないのか?ヴァルハラが崩れ去る時に、黒崎沙羅と約束を交わしていたではないか」


女性は、そう言ってヘルメットを取ると、その中に隠されていたブロンドの髪が現れ、綺麗な顔が俺の目に飛び込んで来た。


「……あ、あなたは。俺の夢の中に出て来た!えっ?なんでだ……気持ち悪い」


「記憶に揺さぶりをかけているのだ。気持ち悪くもなろう。それでもまだ思い出せぬと言うのなら、お前に任せるしかないな」


記憶に揺さぶりをかける?


黒崎沙羅……その名前を聞くと、妙に苦しくなるのはなんでだ。


黒崎沙羅……優しい目をした、俺が好きだった人。


「恵梨香さんがどうしてもって言うからさ。さあ、結城昴。構えろ」


本当に……何だってんだよ!


この人達は何者で、俺に何をしようと言うんだ!
< 1,033 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop