東京ヴァルハラ異聞録
俺に気付き、ゆっくりと振り返って見せる久慈さん。


これは……何が起こったんだ。


何が起こって、久慈さんの両手剣が篠田さんの胸を貫いているんだ?


その剣を引き抜き、ステージ上の真由さんの隣で床に倒れ込んだ篠田さん。


「結城……見てしまったか」


そう、久慈さんが呟いた時には、俺は日本刀を握り締めて飛び掛かっていた。


「なんで!なんでなんで!!篠田さんはもう復活出来ないんだ!あんたは……それを知ってやったのか!!」


それに反応し、両手剣を振り上げて俺の日本刀を弾く。


「ああ、知っている。だから殺ったんだ」


一撃が重い!


日本刀と共に弾かれた俺は、宙で回転して床に落下した。


「く、くそっ!!仲間じゃなかったのか……篠田さんは仲間じゃなかったのかよ!!」


「お前如きが仲間だなんだと口にするなよ!!このまま去れば見逃してやる!それでも掛かってくるなら、お前もこうなる事を覚悟しろ!!」


そう言い、両手剣で倒れた篠田さんを指した。


俺は……少しは強くなったつもりだった。


だけど……人の仇を討てるほど強くはなかった。


それを痛感したのに、ここでも追い打ちをかけられて。


金色の真由さんは、大切な人の死を悲しむかのような表情だった。
< 354 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop