東京ヴァルハラ異聞録
ふとした疑問を口にしただけだった。


だけど、御田さんは咳払いを一つして。


「その事だが。良いか、ボウズ。お前さんは知る権利があるから言うが、他の誰にも言っちゃならん」


真剣な眼差しを俺に向ける。


「え?あ、は、はい」


その気迫に圧されて、声が押し出されるようにして出た。





「タケさんはな……秋本との決闘で、PBTが破壊されたんだ。じゃから、回復も出来んし食事を注文する事も出来ん。秋本が言った、半分死んでるとはそういう事なんじゃよ」






その言葉は、梨奈さんを失った俺に、さらに衝撃を与えた。


決闘が終わったのも、PBTを破壊されてしまったから?


いや、だけど篠田さんは戦っていたじゃないか。


「う、嘘でしょ?じゃあ、篠田さんの怪我は治らないんですか!?もう、戦えないんですか!」


「だがな、タケさんは西軍の象徴だ。いるだけで他軍への圧力になる存在なんじゃ。戦うだけが全てではない」


「お、俺……篠田さんの所に行ってきます!」


俺が行って何が出来ると言うわけではないけれど、俺のわがままのせいでPBTを破壊されてしまったんだ。


エレベーターに乗り、七階のライブハウス。


「篠田さん!すみま……」


大きなドアを開けた俺は……そこで、久慈さんの大剣に貫かれて項垂れる篠田さんを見てしまったのだ。
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