東京ヴァルハラ異聞録
「何もありませんよ。ただ、戦わなければ、強くなければ何も出来ないと思っただけです」


あの人に会う事も、元の世界に戻る事も出来ない。


この街にいる人達は、皆思っている事だろう。


「いいわね。じゃあ、私がメイン、昴くんはサポートで、後衛は美佳。連携なんて考えてないけど、お互いを助ける。わかった?」


「はい」


短くそう答え、俺達はビルの陰に隠れてその時を待った。


PBTから、戦闘終了のアラームが聞こえたのはそれからしばらくしてから。


一斉に撤退する場合は、大通りをひと塊で移動するけれど、それからはぐれた場合や負傷している場合、路地を通って人目に付かないように自軍に戻ろうとするらしい。


俺達は、その人達を狙う。


なんだか弱いものいじめみたいだけど、まだ弱い俺達が強くなるにはこういう方法で少しずつ強くなるしかないんだろうな。


「来た。敵は……三人。一人は負傷してるみたいね」


梨奈さんが指差した先には、辺りを見回し、足を引きずり、肩を貸しながら南軍へと向かう三人組。




「大丈夫か?もうすぐ南軍に戻れるぞ。ほら、しっかりしろ」


「そんな傷、南軍に戻ればすぐに回復するからな。死ぬんじゃねえぞ」
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