東京ヴァルハラ異聞録
強くなりたい……強くならなければならないと思う俺の心を、掻き乱すような会話。


聞かなければ良かったと、俺は頭を掻きむしった。


「昴くん?同情なんてしちゃダメだからね?あいつらを逃せば、次の総力戦ではまた元気になって人を殺すんだから」


そんな俺を見て、梨奈さんが囁く。


わかってる……わかってるつもりだけど。


相手は心がない殺戮マシーンじゃない。


俺と同じように生きている人間なんだ。


強くなりたいと思う気持ちと、本当にこれで良いのかという思いが再び喧嘩をし始める。



「南軍に戻ったら、メシを食おうぜ。お前が好きな物でいいからよ。だから頑張れ」


「ごめんね。私がドジ踏まなきゃ、二人とももっと早く戻れてたのに」


人間同士の会話。


それがますます俺の心を掻き乱す。


そして、俺達が潜むビルの前を通った時……梨奈さんが飛び出した。


手斧を振り上げ、一人の男に襲い掛かったのだ。


「!?」


不意を突かれたと、驚いた表情を見せた三人。


振り下ろした手斧が、男の頭部に直撃した。


……と、思われたけど、警戒していたのか、男は梨奈さんの手斧を武器で受け止めていたのだ。
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