東京ヴァルハラ異聞録
ペタリと美姫がその場に座り込み、鼻に手を当てる。


力を使い過ぎたのか、鼻血が流れ、それが止まらない。


「美姫さん!!」


「ごめん、千桜さん……私、もう無理みたい」


力を使う事による空腹、そして出血。


それを見た千桜は、美姫の言葉に偽りはないと覚悟を決めた。


「だったら、僕がやりますよ。伊達にこの街でこれまで生き抜いて来たわけじゃないですからね」


「誰が相手でも俺は負けないね。さあ、キングの場所さえ教えたら、今ならひっぱたく程度で済ましてやるぞ?」


「それは御免こうむりますね!」


指の間に棒手裏剣を取り出し、伊良に向かって駆け出した千桜。


分身を繰り出し、徐々に伊良に迫る。


「この数の分身を出すか。なかなかやるようだけど……俺には関係ないね」


そう言って、ミョルニルをポイッと上方に投げる。


すると、ミョルニルがピタリと止まり、千桜の方に飛んで行ったのだ。


「!?」


予想外の武器の動きに、慌てて腕で防ぐが、ミョルニルが直撃し、ビルの壁に叩き付けられた。


「ぐはっ……そんな……バカな」


今の攻撃で、腕は完全に粉砕されただろう。


それでも千桜は立ち上がり、ふらつく足取りで伊良の前に立ちはだかった。
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