東京ヴァルハラ異聞録
「宙に……浮いてる?」


見上げた伊良は、またしても不可解な事態に、戸惑いを隠し切れなかった。


「これは……北浦!?余計な事をするな!降ろせっ!」


すぐに美姫の仕業だと判断した橋本は、辺りを見回して声を上げた。


自分の他に、同じく浮いている千桜を見て。


「ダメッ!!無駄死にしないでっ!この人は強いから逃げなきゃ!!」


ビルの屋上の方から聞こえた美姫の声に、伊良は武器を握り締めた。


戸惑いを見せはしたが、そこは伊良。


すぐに状況を整理し、宙に浮かぶ橋本に向かってミョルニルを投げ付ける。


「させないっ!!」


美姫の声と共に、ミョルニルを避けるように橋本と千桜の身体が上昇する。


だが、橋本の身体を捉えられなかったミョルニルは空中で方向を変えて、再び橋本に襲い掛かる!


「追って来る!?」


さらに二人を上昇させ、その攻撃から守ろうとするが、何度回避しても変わらず追って来ていたのだ。


敵に当たるまで、どこまでも追ってくる武器。


これほど厄介な物はないと、美姫が諦めそうになった時だった。


ミョルニルは空中でピタリと止まり、伊良の元へと戻ったのだ。


「あーあ、射程範囲外に出たかよ。まあいい。どうせやつらは俺の相手にならないからな」


フゥッと溜め息をついたが、それには僅かながら安堵感が入り交じっていた。
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