東京ヴァルハラ異聞録
「あいつが二つ名で呼ばれる時が来るとはね。この街って本当にそういうの好きだよな。誰が決めているんだか」


呆れたようにそう尋ね、引き返すにも行かない川本は、迷うように歩く。


どこに行けば良いかもわからない。


出来るなら昴が駆け付けてくれて、説得してくれればこんな作戦やめるのにと、川本は考えていた。


「二つ名は、誰か特定の人が決めるのではないですよ。その人の振る舞いや強さを称え、畏怖し、言葉に込めてそう呼ぶのです。まあ、東軍で呼ばれているみたいですから、南軍の人は知らないでしょうけど」


「ま、どうでもいいけどね。昴は昴だし……ん?」


そこまで言った時、川本は再び足を止めた。


何かが、頭の中を過ぎったと言うか、不思議な感覚があったから。


そしてそれが、何かという事はわかった。


「どうかしましたか?川本さん」


「マスター……誰かが来る。この感覚は……昴?」


頭に手を当てて、妙な事を口走った川本を見て、大塚も頭に手を当ててみる。


だが、大塚には何も感じないようで、辺りを見回して昴の姿を探した。


「昴くんの姿は見えないようですが……本当に感じるのですか?昴くんを」
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