東京ルミナスピラー
胸が締め付けられる。


灯の姉さんと父さんを見てから……この家を見てさらに。


遠い遠い昔に……いや、それさえもわからないけど、忘れてはならない約束をしたような気がして。


「それじゃあ皆で家に入ろうか。母さんが、灯の彼氏が来るってんで、とびきり張り切って料理を作ってんだ」


お父さんに背中を押され、玄関へと歩く俺と灯。


ニコニコしながら姉さんと父さんが後ろについて。


一歩一歩、俺は歩く。


そうだ。


遠い日、この光景を夢見た俺は……この家の玄関から出て、あの街へと向かったんだ。


果たされることなく消滅した約束。


叶えられた願いと、叶えられなかった願い。











「あの日、黒井が手にするはずだったPBTを消滅させてくれ。そしてその日から世界をやり直させてくれ」










母さんの温もりに包まれながら、俺が呟いた言葉が頭の中で蘇った。


どんな結末を望んでも、誰かが望まない世界になってしまう。


全ての人が満足出来る未来なんて存在しなくて、誰かが幸せなら、誰かが不幸になる。


遠い遠い、今とは違うあの日。


約束を果たす為に、俺ではない誰かが願った世界。


灯が開けた玄関のドアの向こう。


エプロンを着けた女性が、驚いたような表情で俺達を見ていた。


何を感じたのかはわからない。


本人にしかわからない、望んだ物がそこにあったのかもしれない。


だから俺は……微笑んだんだ。







「ただいま。母さん」








「おかえり。皆」









俺の言葉に答えるように、涙ぐんだ母さんが腕を広げて飛び付いて来た。


果たされることなく消滅した遠い日の約束。


それが今、果たされたんだという満たされた想いが、この場には溢れているようだった。





殺戮都市〜バベル〜
東京ヴァルハラ異聞録
東京ルミナスピラー


【完】
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