東京ルミナスピラー
とりあえず夕蘭のことは何とかなった。


外に出て、上野の方へと向かう。


「灯、少し飛ばすぞ。ついてこれるか?」


「まだ速くなるの!? ちょっと厳しいかも」


俺には疾風スキルがあるけど、灯にはこれ以上の速度はきついか。


無理は出来ないけど、少しでも速く移動したいと思った俺は、灯から視線を逸らして左手を差し出した。


「じゃ、じゃあ俺の手を握ってろよ。引っ張ってやるからさ」


さっきまでのことがあるから、なんだか照れくさいというか。


それでも灯は手を繋ぐと、嬉しそうな笑顔になった。


「い、行くぞ。父さんに会わなきゃなんだからな」


「うん」


小さく頷いた灯の手を引いて、俺は走り出した。


全力……には程遠いけど、さっきよりはまだ速い。


中央通りには、今度は北軍の人間がチラホラと見える。


「間合いが遠いな。灯、左のやつに届くか?」


「走りながらだと届かないかも。右手は塞がってるしね」


「そうか。じゃあ俺が勢いをつけてやる!」


そう言いながら灯を引っ張り、時計回りに回転を始める。


大きく弧を描くように回転した灯は驚いた様子だったけれど……その理由がわかるとすぐに狙いを定め、回転の勢いを殺さないように風火輪を投げ付けて、北軍の首を飛ばしたのだ。
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