溺愛フレグランス


デスクに着くと、もう私の話題で持ち切りになっている。
朔太郎の手続きを担当した窓口の人が、ずっと、朔太郎の動向を追っていたらしい。

「晴美ちゃんを訪ねてきた人って誰なの?
めちゃくちゃいい男だったって、窓の人がわざわざ教えにきてくれたほどなんだから」

職員でチーフの村井さんが興味津々にそう聞いてきた。
郵送グループのメンバーは、四十代の村井さんを筆頭に独身女性がなぜか多い。もちろん、私のその中の一人だけれど。

「幼なじみなんです。
仕事場を改築するかなんかで、しばらく実家に戻ってきてて。
仕事場に自分の住まいも兼ねる設計みたいな、あ、全部うちの母の情報なんですけど。
だから、残念ですが、何もときめくような話じゃありません」

私はそう言いながらてきぱき仕事をし始める。

「晴美ちゃんは意外に男性にモテるのにまだ独身なのが不思議だったんだけど、幼なじみがそんないい男だったら、そうなっちゃうか…
子供の頃から男性の基準が無意識のうちに高くなってるのかもしれないね。
あ~、でも、私もそのいい男の幼なじみ君を見たかったな。
晴美ちゃん、今度紹介してね」

私は苦笑いをしながら、うんともすんとも言わなかった。
だって、村井さんの紹介してね、はいつだって本気で、適当に返事をすると恐ろしいほどのライン攻撃になるのが目に見えている。


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