翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「美緒、帰るぞ」


ただそう言っただけなのにクラスの女子の目がいっせいにこっちに向くのがわかる。
それはまさしく、羨望の眼差し。


聞き慣れたはずの私でさえ、その落ち着いた低い声に吸い寄せられるもん。


でも色々学習して経験値をちょっとだけ上げた私はそれに応えることをためらっている。


「華世ちゃん……わたし、わたしは」

私はあなたとかき氷を食べたいの。

「美緒ちゃんバイバイ、また明日ね」


それなのに……突き放されました。
でも彼女の言葉はきっと頑張れの合図なんだ。


にっこり笑ってから、ギュッと厳しい顔つきに変身したもん。
彼女が行けと言うのなら。


「うん……バイバイ」


翔ちゃんが珍しく迎えに来てくれたというのに、こともあろうにがっくりうなだれてしまった。


だってほんとにほんとに華世ちゃんと帰りたかった。いちごもマンゴーも両方食べたかった。


私にだって翔ちゃんのそばにいたくない日がある。
あんなことがあって、平気な顔で翔ちゃんとかき氷をシェアできるほど無神経じゃないし、子供でもない。

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