翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

お湯に顎まで使って思い出してた。
中学のときのこと。


もうガキじゃないのに、子供の頃のまんま付きまとってくる美緒が邪魔だと思った。
俺のそばにいると、ろくなことがないのに。


その頃一緒につるんでたのが校内でもヤンチャな奴等ばっかだったから、美緒との仲をいじられるのが嫌だった。


それに彼女気取りの女子たちに妬まれるだけだし、俺のそばにいて美緒にメリットなんかない。


だから、遠ざけた。
冷たくあしらって。


無邪気に行き来してた部屋ももちろん封鎖。2度と上げることはないと思ったし、
俺から行くわけもない。


登下校も、もちろん別。
たまに鉢合って帰ることもあったけど、先をスタスタ歩いて話もろくにしなかった。


幼なじみっていったって、家が隣なだけじゃん。別に家同士の付き合いなんかなくてもいいし、絶対に仲良くしなきゃならないって決まりがあるわけでもない。


人の周りをいつまでもチョロチョロすんな。恥ずいから翔ちゃん呼びやめろ。冷たくされてんだから空気読め。
そう何度も舌打ちしたはずだった。


でも、ほんとは違った。
つるんでた奴らが美緒にちょっかい出すのがムカついた。


自分で遠ざけておきながら、ひとりでちゃんとやれてんのかすげー気になった。


ただ隣同士に生まれただけって思い込もうと無理をしていただけ。


小さい頃の楽しい思い出は、いつも俺の心を痛くした。
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