翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「もうここで着替えていい?」

「え!」

「それとも美緒が脱がしてみる?」

「そ、それはあのそのあのあれ」


このうろたえ方はいつ見ても面白い。
でもって可愛い。しかも方法としては正解だった。


「ほら、涙止まった」

「あ……ほんとだ」


子供みたいなまるい頬を包んで、親指で滲んだ涙を拭った。


「なんとなく掴んできたな、美緒の涙の止めかた。ちょっとは彼氏っぽい?」

「……うん、すごいや。翔ちゃんにしかできない技だね」


潤んだ目でそんなに真っ直ぐみつめないで欲しい。おかしくなりそうだから。


涙の流れた跡にそっとキスしたら、ほっぺたがしょっぱかった。たぶんこれがキュンの味。


「美緒は俺のもの」


ただそう言いたくなっただけ。


「え、あの、うん。……きゃ!」


形勢逆転してしまえ。


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