翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「こっちのが自然じゃね?」

「翔ちゃん!ちょ、ちょっと!」


まだなんもしてないんだけど。


「言い訳する唇なんていくらでも塞げんだからな」


なのに真っ赤になっちゃって。


「ちょっとだけ、し、深呼吸させて?」


「無理。覚悟して来たんだろ?」


そんなのハッタリ。
覚悟してたのはこっちの方。
だって俺フラれるんだと思ってたし。
でももうちょっとだけ苛めてやろっかな。


「翔ちゃんっ、待って!」


「無理、待てない」


うそだよ。美緒が嫌がることなんかするわけねーじゃん。


ずっと大事だと思ってきたし、これからだって大事にしたいと思ってる。それはたぶん、どんなことがあっても変わらない。


「すぅーはぁーすぅぅー」


なのに真に受けてほんとに深呼吸してるし。あーもうダメ。たまらずに、つい。


「チュ」

「ひゃぁ!」

「え、ダメだった?」

「ずるい!それはずるいっ!」

「だって鎖骨だけやけに色っぽいから」

「だけ!って何よ、ひどい!」


怒ってむきになる表情も、全部俺のもの。
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