『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 やだ。
 どうしよう。
 なんて呼べばいいの?
 まさか、ゾンビとも呼べないし。
「すーみま、せぇーん」

 チーン

 お返事はなんだか澄みわたったカネの音。
 音のしたほうに、空になった段ボールを3個、右に左によけながら進むと、ぷーんとお線香の匂いが漂ってきた。
 お仏壇は2階のリビングに仏間を作って移動したのに。
(なんだ、なんだ?)
 匂いの元はどうも、おばあちゃんが富山から持ってきた骨とう品と絵画、いまは遺品になってしまった着物がとりあえず収められた一番奥の四畳半。
 全開のふすまの横で立ち止まって。
「あのぉー」
 とりあえず声をかけてから部屋をのぞくと、おばあちゃんの桐タンスの前には、たぶんゾンビの持ちこんだ段ボール箱が3個。
 それに、スチールのふちどりの、なんだかりっぱな黒い硬そうな箱がいっぱい。
「変な荷物……」
 思わずつぶやいてしまったら、生ワカメ頭が、畳の上に正座したまま、ふり向いた。
 お線香の煙は、その彼の身体の向こうからまっすぐ立ちのぼっている。
 好奇心から一歩近づくと。
(しーんじられない)
 お線香は、発砲スチロール? 
(ちがう!)
 おとうふに突き刺さっていた。
 おまけに、チーン…の正体は――…
< 15 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop