『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「な…」にそれ。
「ここ、じーさんばーさんの遺品だらけやろ。ちょぅ、あいさつしとかんと」
「…………」
 それが、お通夜の席で寝こけたやつの言うことか? と思うけど。
 百歩ゆずって。
 その気持ちはすばらしいと、言えなくも、ない。
 でも!
 なんなの、それ?
 あたしの視線に気がついて、
「あ、これ?」
 ゾンビが笑って、チーン。
 トライアングルをたたく。
「名案やろ」
「どこがっ」
 どういう精神構造をしてるんだ、こいつは。
 なんだって、そんなものを持ってるんだっ。
 わけわかんない。
「これで、ばーさんにもあいさつはすんだし、荷物、ひろげるか」
 あたしがあきれているのはわかったはずなのに、ゾンビはにっこり笑いながら立ち上がる。
 あの、ボーズ頭のころのお肉は全部、上に伸びるための肥やしだったのかしら…と思うほど、背ばっかり高くなっちゃって、このひとは。
「ところで、な」
 なによ。
 ゾンビは、えらそうに『やれやれ』という顔をして腕を組んだ。
「おめぇは、ひとのこと呼ばわるのに、もしもーしとか、あのぉとかしか言えんのか?」
 うっ。
「ちゃんと名前で呼びゃあ」
「――名前って?」
(のぞみ)さん、やろ」
 げー。
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