『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 なぁにが『さん』だ。
 つぶやいたのを、しっかり聞かれた。
「ったく。東京のガキは、態度がデケーでかんわっ」
 どっちがよ。
 なんなのよ。
 ちょっと血がつながってると思って、ずうずうしいったら。
 下宿くらい自分で探せ。
 あたしはお父さんたちみたいに『こんなときの親戚じゃないか』なんて言って、やさしくしてやったりしないからね。
 おぼえときなさいよ。
 絶対、追い出してやるから。

 ゾンビがため息をつく。
「…そんな、にらむなよ。別に、この(うち)をのっとろういうわけやねぇんやで」
「…………」
 やだ。別にそこまでは思ってなかったけど?
「おじさんたちがなんて言ったかは知らんけど――。おれは、ばーさんの遺言より、本人の気持ちのほうが大事や思」「ちょっと!」

 ゆいごん?
 おばあちゃんの?

「ああ……」眉をひそめたあたしの顔をじっと見てゾンビがうなずく。
「知らんのか」
 知らんわい。
「ほぅか。知らんのか」
 うん。
「遺言て?」
「…………」
「…………」
「…………」
 ちょっと。なんで黙るのよ。
「…ま、そうやろな。おじさんらしいわ」
「――ぇ?」
 ちょっと、ちょっと、ちょっと!
 ひとりで、うんうん、納得するのやめて。
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