無口な彼の熾烈な想い
「鈴は自覚がないだろうがかなり酔っぱらっているらしい。呂律も回っていないし、千紘さんに電話して聞いたら、鈴は酔うと足腰が立たなくなると言っていた」

゛あの馬鹿兄貴、妹の弱点を売りやがったな゛

鈴は段々と冴えていく頭と裏腹に、力の入らないままの身体を自覚して恥ずかしくなり、脳内では関係のない兄を罵倒していた。

「だから俺が責任を持って鈴を部屋まで送っていく」

ええ?!

いきなり恋愛初心者にはハードな゛玄関まで送らせて゛イベント来ちゃいましたよ。

つい先日までの絢斗なら躊躇うはずのこのイベント。

鈴を酔わせた責任感で申し出てくれているのは十分わかっているが、゛お礼にお部屋にご招待せねば゛フラグが立っているようで鈴も戸惑う。

だが、冷静な?頭とは裏腹に、力の入らない身体では部屋の前まで辿り着くのもやっとだと自覚しており、ここは覚悟を決めて絢斗に送られる選択肢を選ぶしかない!と鈴は思いを新たにした。

゛選択肢を間違っていなければいいけど゛

どこまでもゲーム恋愛脳の鈴は、選択肢を間違わなければ間違いは起きないだろうと高を括っている。

だが、本能に目覚めた男の本気をわかっていない。

鈴がどんな選択肢を選ぼうが、絢斗の目標は1つだ。

そのためなら腹黒いと言われようが策を練り、鈴の懐に入り込もうと躍起になっていることに鈴が気付くはずはなかった。
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