無口な彼の熾烈な想い
「絢斗さんは、そこに座っていてください。紅茶をいれますから」

部屋に入った鈴は、絢斗によってソファに誘導され、彼に寄りかかるようにして目を閉じるように強要された。

しばらくは目を閉じてウトウトとまどろんでいた鈴だったが、優しく鈴の肩を撫でている絢斗の存在に気付き、はたと目を覚ます。

そっと絢斗を押し退けてゆっくりと立ち上がった。

鈴は甘えてしまった恥ずかしさをごまかそうと、紅茶をいれるために台所へ向かった。

アルコールを摂取してから気づけば三時間ほどが経過している。

いつの間にかすでに0時を過ぎているではないか。

鈴は、想像以上に絢斗を拘束してしまい罪悪感に苛まれていた。

しっかりと休んだお陰で鈴の足腰はすっかり立つようになり、これ以上絢斗の手を煩わせることはなさそうだ。

鈴は、ホッと一息をつきなからお気に入りの紅茶をティーポットに入れお湯を注いだ。

「これ、私のお気に入りの紅茶なんです。ジングルベルって名前でとある紅茶専門店で購入しているんです」

ソファの前のテーブルに紅茶を置いた鈴は、躊躇いながら絢斗の隣に腰かけた。

「鈴、俺に隠し事をしてないか?」

「隠し事ですか?」

はて?と鈴は自分の中に問うてみる。

隠し事をするなと言われるほど彼とは親しくなってはいない。

だから話していない全ては隠し事になるのだが、絢斗の言う隠し事とは何を指すのだろう、と鈴は首を傾げた。

「今日は何の日だ?」

「えっと、クリスマスイブ、ですかね」

「敬語」

「イブ、だね」

鈴をじっと見つめる絢斗の瞳がキラキラして眩しい。

動揺しながらも近すぎる距離に、鈴は戸惑いを隠そうと必死だ。
< 112 / 134 >

この作品をシェア

pagetop