無口な彼の熾烈な想い
「誕生日・・・」

「えっ?誕生日・・・?あっそうだった。私の誕生日、今日だったね」

鈴が自分の誕生日を忘れてしまいがちなのは無理もない。

学生時代、誕生日はすでに冬休み期間だった。

冬休み期間では、校内放送でおめでとうを言われることも、友達から誕生日プレゼントを貰うことも皆無だった。

高校生になってからは、かなえからおめでとうメッセージをもらうことはあったが、お互いにプレゼントのやり取りはしないと決めていたので当日まで忘れていることが常だった。

さらに、世の中のカップル達にとってもクリスマスイブは特別な1日。

不倫中の両親にとってもそれは同様で、彼らには鈴の誕生日は眼中になく、鈴にも特別感はなかった。

堂々と両親がパートナーである夫や妻以外とデートに勤しむ・・・そんな自分の誕生日が、鈴は嫌いだった。

兄だけはいつもケーキを買ってきて鈴の誕生日を祝ってくれたが、鈴にとってはそれだけが特別な非日常で、それ以外はいつもと変わりないどころか憂鬱な1日だったのだ。

゛考えてみれば卑屈な上に可愛いげがない考え方だな、私って゛

鈴は改めて自分の内面と向き合うことになり、フフっと自嘲した。

しかし、鈴と言う名前だけはクリスマスイブ生まれの自分にちなんでつけられた唯一のプレゼントであると、鈴は自覚していた。

大好きな祖父・一郎が付けてくれた素敵な名前。

鈴はそんな大昔のことに思いを馳せて微笑んでいた。
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