無口な彼の熾烈な想い
「あー、お腹いっぱい・・・って、もうすぐ1時だよ。絢斗さんも早くお家に帰らないと・・・」

時間がとうに深夜を回り、絢斗を想像以上に拘束してしまったことを再認識した鈴は、焦って絢斗に向き直った。

しかし、鈴はそこで目にした絢斗に驚いて二の句を紡げずにいた。

首や手のひらまで薄ピンクに色づく絢斗が目の前にいたからである。

考えてみたら、鈴は絢斗がお酒を飲んだところを見たことはない。

ついさっきまでは、ブランデーケーキに含まれるブランデーをお酒とは認識していなかったが、もしかしたら、絢斗は少量のお酒にも反応する体質なのかもしれなかった。

「だ、大丈夫?もしかしてお酒にめっちゃ弱かったりする?」

鈴は、慌てて絢斗の頬に両手を当ててその熱を確認した。

「いや、顔には出やすいが酔ってるわけではない」

「説得力なさすぎな顔だよ。え~っとブランデーケーキに含まれるブランデーのアルコール濃度ってどれくらいなのかな?」

鈴が絢斗から離れてスマホでネット検索をする。

そうしてわかったことは、ブランデーケーキを食べたあとに呼気に含まれるアルコールは10mg程度。

飲酒運転に該当するのは15mg以上だから、車を運転しても問題ないレベルであるが、アルコールに弱そうな絢斗にこのまま車を運転させて帰すのは倫理的にどうなのだろうか、と鈴は頭を抱えた。

このまま帰しては、みすみす、年末の交通安全取り締まりに精を出す警察官の餌食として絢斗を差し出すようなものだ。

自らも再びブランデーでほろ酔い気分になっていた鈴は、思いきって絢斗を家に泊めることを決意する。

女は度胸、武士に二言はない!

「酔っぱらいに車の運転などさせられません。よく確認もせずにケーキを食べさせた私にも責任があります。どうぞ今晩は我が家に泊まっていってください」

虚ろな目をしながらも驚いたような顔で絢斗は鈴を見つめる。

「大丈夫。私が絢斗さんを襲う心配はないし、ゲストルームにはベッドもあります。着替えなら少し小さいだろうけど兄のスエットがありますから使ってください」

そう言い切った鈴は、顔を真っ赤にしながらバスルームの方へ駆けていった。
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