無口な彼の熾烈な想い
鈴への恋心を自覚した絢斗は、明日、24日に有給休暇をもらったと言っていた鈴に対し何らかの行動を起こさねばと考え込んでいた。

しばらく車を走らせていると鈴が眠っている車内に、絢斗のスマホの着信音が鳴った。

コンビニに車を止めて内容を確認すれば、そこには姉からのSNSメッセージ。

今日の報告をするために鈴の兄である千紘に連絡をいれたところ、24日は鈴の誕生日で、ゆっくりさせるために有給を与えたとの耳寄りな情報が書かれていた。

鈴が誕生日を盾にプレゼントをねだってくるような欲深な人間ではないと知ってはいるが、一方的に親しくなったと思っている絢斗は話してくれなかったことが面白くなかった。

絢斗は千紘に電話を入れ、アニマルプレート完成の報告ついでに、酔っている鈴を送り届けている途中だと報告した。

千紘からは、酔った鈴は次第に足腰が立たなくなるからよろしく頼むと言われた。

電話を切った絢斗は、気づけば鈴を起こさないように車を下り、仮初めのプレゼントとなるような物を物色していた。

『明日は休みにしたわよ』

と、ルイと綾香から謎の激励を受けているし、千紘からは送り狼になる権利も与えられている。

期待に答えないわけにはいかない。

絢斗はクリスマスケーキの中に大人向けのブランデーケーキがあることに気がついて口角を僅かに上げた。

そして、思惑通りにことは進み、絢斗は鈴宅に゛初めてのお泊まり゛イベントを発生させることに成功したのである。

何も知らない純粋な鈴には申し訳ないが、絢斗も最初で最後の本気の恋、逃がすわけにはいかない。

傷心ワンコならぬ腹黒狼に狙われた哀れな子羊に、絢斗は黒い笑みを浮かべながら鈴が戻ってくるのを待った。
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