無口な彼の熾烈な想い
しかし鈴は、比較的興味の薄いことには飽きるのも早い。

さっさと気を取り直して

「では、鳥籠も届きましたしピーちゃんを連れてきます」

と言って、さっさと奥に引っ込んだ。

数分で待合室に現れた鈴は、両手に入院用の鳥籠を抱えて出てきた。

「あ、ピーちゃん。お帰り。今度、花菜にも卵産んで見せてね」

「ピーチャン、オカエリ、オヤツ、マダ?」

花菜の声かけに合わせて、ピーちゃんも嬉しそうに喋りだす。

セキセイインコは早ければ2、3ヶ月で話しはじめる子もいる。

生後半年(と思われる)で話しているところを見ると、かなりの時間、花菜が話しかけていたことが推測された。

「昨日から緊張していたのか、ここではピーちゃんは一言もおしゃべりしなかったんだよ。きっと、花菜ちゃんがいなくて寂しかったんだね。今は嬉しくてお話ししてるんだよ」

鈴がそういうと、花菜は嬉しそうに微笑んで、徐に入院用の鳥籠に手を突っ込んだ。

「だめよ、花菜」

「大丈夫ですよ。すっかり元気ですから」

3次元美女が嗜めるのを遮ると、鈴は花菜の好きなようにさせるように言った。

「カナチャン、スキ」

「カナもピーちゃん好き」

指にとまらせたピーちゃんの顔にスリスリと頬を寄せる花菜は、すっかり溺愛飼い主に戻っていた。

しかし、甘やかすだけでも溺愛しすぎでも良くない。

飼い主の行動が、ピーちゃんの今後の未来を決めるのだ。

「関口さん、ピーちゃんの今後の飼育について説明させて頂いてもよろしいでしょうか?」

受付カウンターからパンフレットを取り出した鈴は、真剣な顔をして3次元美女に向き直った。

発情しないための環境作り、そして万が一卵を量産してしまった場合の対処法や餌の工夫、そういった細かい点へのアドバイスを、鈴は丁寧に分かりやすくパンフレットを使って説明していった。
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