無口な彼の熾烈な想い
「ただ餌をやればいいと言うわけではないんですね」

一通りの話を聞いてため息をついた3次元美女は、自分の浅はかさを知った、と呟いた。

「誰でも初めてはあります。しかし、命をあずかったからには責任が生じます。知らなかったではすまされない最低限の知識が飼い主の心と動物の命を守ることになるのです」

カウンター越しに、兄夫婦も笑顔で頷いている。

3次元美女も、納得したように頷き、花菜にピーちゃんを自前の鳥籠に入れるように促した。

もちろん、この間、絢斗は一言も発していない。

何しに来たのだろうか?

鈴はチラリと絢斗に視線を向けると、軽く首を傾げて再び花菜とピーちゃんに目を向けた。

その様子を見ていた3次元美女もとい関口綾香(あやかという名らしく、問診票の備考欄に保護者名と続柄:母という情報が追加され判明)が口を開いた。

「お会計を済ませたらそろそろお暇させていただこうと思います。抱卵対策の偽卵と餌も購入させてください。ほら、絢斗さっさと、お支払しなさいよ」

なんと、支払いは飼い主ではなく、代理がするらしい。

なんとなく、姉弟の勢力図がわかった気がした。

千紘が餌と偽卵を袋に積める、玖美が会計をしつつ、絢斗の顔をマジマジと見つめる。

不躾な態度にも表情を変えない絢斗は、ある意味、賢者なのかもしれないと、鈴は思った。

冒険者RPGの勇者なだけに・・・賢者とかフフ・・・。

仕事をしながらも妄想に忙しい鈴であった。
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