無口な彼の熾烈な想い
「さて、そろそろ返信でもしますか」

昨夜コンビニで買って帰ったサンドイッチとサラダを食べ終え、洗濯機を回しはじめた鈴は、大きく伸びをして呟いた。

父方の祖父から生前贈与されたマンションは築15年だが傷みもなく綺麗だ。

鈴は兄の千紘と二人兄弟だが、兄はマンションの代わりに祖父が経営していた動物病院とその土地を譲り受けている。

獣医だった祖父は現在76歳。

現役の獣医を引退して、動物愛護団体でボランティアをしている。

鈴にとって祖父は卵詰まりのインコを助けてくれたヒーローだ。

祖父は昔堅気の親方気質で、言葉は少ないが人情に熱い。

近所の子供たちは、そんな祖父:一郎のことを怖がったが、鈴は昔から動物を大切に扱う頑固な祖父が大好きだった。

「そういえば、おじいちゃん元気かな?」

マンションの部屋を見渡して、ふと昔のことを思い出していた鈴は、なんとなくそんなことを思った。

゛便りがないのは良い便り゛

なんて、考えた甘い鈴の心を揺るがす便りがもたらされるのは実に数秒後のことだった。
< 26 / 134 >

この作品をシェア

pagetop