無口な彼の熾烈な想い
゛応答せよ、応答せよ゛
こんな趣味の悪い着信音に設定するのは兄の千紘ぐらいしかいない。
おそらく、昨夜、平野ペットクリックの受け付けカウンターに置きっぱなしにしていた鈴のスマホを勝手に触り、設定変更したと思われる。
ロック画面を駆使しない鈴も悪いのだが、何せ鈴はお一人様のため、出かけ先で万が一鈴が倒れてしまった際に、スマホロックをかけていることで誰とも連絡がつかない場合を懸念するとロックできないままでいるのだ。
実際、鈴の父方の祖母は買い物しているショッピングセンター内のトイレで倒れたのだが、スマホにロックをかけていたため、スマホを携帯していたにも関わらずなかなか身元が判明せず家族への連絡が遅れたことがあるのだ。
千紘もその事をきっかけに鈴がスマホにロックをかけていないことを知っていて定期的に悪戯をしかけるのだ。
見られて不味いネタはないので、鈴もそこのところはとやかく言わない。
鈴は呆れ顔で、スマホを手に取ると、
「もしもし」
と不機嫌な声で電話に出た。
「おはよう、鈴。いい朝だね」
「何がいい朝よ。もう昼前でしょ?それにまた私のスマホの着信音を勝手に変えたでしょ?プライバシーの侵害で訴えるわよ」
「ごめんごめん」
謝りながらもちっとも真剣味がない。
ちっとも共感できないが、こういう軽いところが、憎めないところであり可愛らしいところであるらしい(自称&義姉談)。
「ところで何か用?洗濯中なんだけど」
「冷たいな。鈴は。洗濯中って言ったって洗濯は洗濯機がしてるんだろう」
「屁理屈」
「フフフ」
生まれてからずっと付き合いのある鈴は慣れているし諦めもあるが、こんな面倒な兄と付き合う玖美は物好きだと心底思う。
まあ、そこそこのイケメンではあるのだろうが。
「今日の夜だけど、出かけるから準備しておくこと。一応きちんと可愛い格好をしてね。お洒落な店に食事に行くんだから」
にわかに雲行きが怪しくなってきた。
「まさか・・・昨日の3次元美女のお誘い?玖美さんと行きなよ。オンコール(急患対応)なら代わるから」
「いや、鈴も行くんだよ。メインは鈴でしょ?あくまでも僕たちはおまけで誘われたんだから。それにクリニックのことは心配いらないよ。今日はじいちゃんに頼んだからね」
じいちゃん・・・間違いなく先ほど思い浮かべた一郎のことだろう。
「鈴とイケメンオーナーの出会いを話したらなんか機嫌よくオンコール引き受けてくれたよ?だから一緒に行こうね。ほら、こんな機会なかなかないし思い立ったが吉日って言うでしょ?」
゛こんな機会何度もあってたまるか゛
鈴は頭が痛くなってきた。
じいちゃん、一郎の今生の思い残しは、鈴の花嫁姿を見ていないこと、そしてひ孫の顔を見ていないことだと言っていた。
今回の件を、兄夫婦が色恋沙汰と縁のなかった鈴の出会いの好機と捉えているのは火を見るより明らかだ。
それを一郎がアシストしないはずはない。
不器用で昔気質とはいえ、かかってくるかもわからないオンコールを代わるくらいは何の苦にもならないのだろう。
鈴には食事に行く気はなく、なんならイケメン好きのかなえにでもディナーチケットを譲ろうかと考えていた矢先の妨害工作としか思えない。
油断も隙もない。
じいちゃんまで参戦となると、無下に断ることは最早できないだろう。
鈴は項垂れてため息をつき、
「面倒くさい」
と、思わず愚痴をこぼしていた。
こんな趣味の悪い着信音に設定するのは兄の千紘ぐらいしかいない。
おそらく、昨夜、平野ペットクリックの受け付けカウンターに置きっぱなしにしていた鈴のスマホを勝手に触り、設定変更したと思われる。
ロック画面を駆使しない鈴も悪いのだが、何せ鈴はお一人様のため、出かけ先で万が一鈴が倒れてしまった際に、スマホロックをかけていることで誰とも連絡がつかない場合を懸念するとロックできないままでいるのだ。
実際、鈴の父方の祖母は買い物しているショッピングセンター内のトイレで倒れたのだが、スマホにロックをかけていたため、スマホを携帯していたにも関わらずなかなか身元が判明せず家族への連絡が遅れたことがあるのだ。
千紘もその事をきっかけに鈴がスマホにロックをかけていないことを知っていて定期的に悪戯をしかけるのだ。
見られて不味いネタはないので、鈴もそこのところはとやかく言わない。
鈴は呆れ顔で、スマホを手に取ると、
「もしもし」
と不機嫌な声で電話に出た。
「おはよう、鈴。いい朝だね」
「何がいい朝よ。もう昼前でしょ?それにまた私のスマホの着信音を勝手に変えたでしょ?プライバシーの侵害で訴えるわよ」
「ごめんごめん」
謝りながらもちっとも真剣味がない。
ちっとも共感できないが、こういう軽いところが、憎めないところであり可愛らしいところであるらしい(自称&義姉談)。
「ところで何か用?洗濯中なんだけど」
「冷たいな。鈴は。洗濯中って言ったって洗濯は洗濯機がしてるんだろう」
「屁理屈」
「フフフ」
生まれてからずっと付き合いのある鈴は慣れているし諦めもあるが、こんな面倒な兄と付き合う玖美は物好きだと心底思う。
まあ、そこそこのイケメンではあるのだろうが。
「今日の夜だけど、出かけるから準備しておくこと。一応きちんと可愛い格好をしてね。お洒落な店に食事に行くんだから」
にわかに雲行きが怪しくなってきた。
「まさか・・・昨日の3次元美女のお誘い?玖美さんと行きなよ。オンコール(急患対応)なら代わるから」
「いや、鈴も行くんだよ。メインは鈴でしょ?あくまでも僕たちはおまけで誘われたんだから。それにクリニックのことは心配いらないよ。今日はじいちゃんに頼んだからね」
じいちゃん・・・間違いなく先ほど思い浮かべた一郎のことだろう。
「鈴とイケメンオーナーの出会いを話したらなんか機嫌よくオンコール引き受けてくれたよ?だから一緒に行こうね。ほら、こんな機会なかなかないし思い立ったが吉日って言うでしょ?」
゛こんな機会何度もあってたまるか゛
鈴は頭が痛くなってきた。
じいちゃん、一郎の今生の思い残しは、鈴の花嫁姿を見ていないこと、そしてひ孫の顔を見ていないことだと言っていた。
今回の件を、兄夫婦が色恋沙汰と縁のなかった鈴の出会いの好機と捉えているのは火を見るより明らかだ。
それを一郎がアシストしないはずはない。
不器用で昔気質とはいえ、かかってくるかもわからないオンコールを代わるくらいは何の苦にもならないのだろう。
鈴には食事に行く気はなく、なんならイケメン好きのかなえにでもディナーチケットを譲ろうかと考えていた矢先の妨害工作としか思えない。
油断も隙もない。
じいちゃんまで参戦となると、無下に断ることは最早できないだろう。
鈴は項垂れてため息をつき、
「面倒くさい」
と、思わず愚痴をこぼしていた。