無口な彼の熾烈な想い
「確かに、あの3次元イケメン、ゲームの推しメンと見かけとか、無口でツンツンなところは似てると思うよ。でも決定的に違うところがあるから無理。あの人にはデレがないの。デレのないツンツンは悪でしかないのだよ」

「何を言ってるんだよ。まだ2回しか会ってないのに、もしもデレたらデレる方が気持ち悪いって言うに決まってるくせに」

確かに、と鈴は思った。

ゲームの推しメンも、なかなかデレてくれなくて攻略に苦慮したことを思い出したのだ。

だが、鈴も暇ではない。

ゲームを始めたのだって、

『絶対に鈴たんの好きそうなキャラだからやってみて』

と、珍しくかなえがごり押ししてきたから嫌々始めたのだ。

『せめてプロローグと第一話まではクリアしたらやめてもいいから』

と言われて渋々ノルマをこなすうちに、推しメンのキャラやイケメンボイスに悩殺されていったのだ。

一種の洗脳とも言え、まんまとかなえの布教活動にのせられた形となる。

だからということでもないが、同じ手口には二度と乗りたくない。

3次元イケメンに填まらせようというこの周囲の思惑は既に二番煎じの手口なのだ。

元々、興味のない3次元イケメンの攻略に時間を割くほど現状に不満があるわけではないし、録りためたテレビ番組を見ることが出来ていないくらいには予定がつまっている。

とはいえ、確かに、深く知り合う前から絢斗の人となりを全否定するほど、鈴が偉いわけでも賢いわけでもないのは確かである。

なんとなく今回も丸め込まれてしまっているような気がしないわけでもないが、今回は大人しく千紘と一郎の言うことを聞いていようと諦める鈴であった。
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