無口な彼の熾烈な想い
「とにかく、18時にマンション前のロータリーに車を寄越す。逃げずに来いよ。もしも逃げたら・・・わかってるよな?」

鈴には拒否権はない。

千紘のバックにはあの、頑固じいさんがいる。

一郎の決めたことに背いたなら、鈴の現在住まうマンションは取り上げられ、ひらのペットクリックでの仕事ですら取り上げられるに違いない。

頑固一徹だが、鈴に無理強いすることも理不尽なことも基本しない祖父だ。

何事にも慎重で下調べはしっかりして行動起こす。

その上でこの3次元イケメン絢斗との縁を大切にしろということなのだろう。

きちんと話をした上でそれでも仲良くすることは無理だ、と言えば納得する人だ・・・たぶん。

「なに、じいさんも僕も鈴が本当に嫌がっているのなら無理強いはしないさ。絢斗くんのこと本当は気になっているんだろう?彼、鈴が今填まっている乙女ゲームの推しメンにそっくりじゃないか」

ギクリ、と鈴のハートが軋む音がした。

まさか、スマホのダウンロードアプリまでチェックされているとは思わなかった。

そこまでするとはなんと鬼畜な兄なのだろうか。

絢斗が鈴の推しメンに似ていると知っているということは、アプリを開いてオープン画面に設定してある最推しキャラを確認したということ。

推しのプロフィールをみればその性格や設定背景等を知ることができる。

妹のゲームから好きな男性のキャラクターを判断するなんて、兄とはいえ許されることではない。

しかし、何事にも動じることの少ない鈴はため息をついて反論を口にした。
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