離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「悠人さん?」

 堪らず発した私は、身を捩り、首を伸ばして高城の顔を覗き込む。ライトの明かりでぼんやりと窺えるその顔は、目を瞑り、長いまつ毛が伏せられていた。

 高城は「んっ?」とまぶたを持ち上げる。

「少し苦しいです」

 私が控えめに言うと、男は「ごめん」とわずかに腕の力を緩めた。

「まつりとくっついていると心地よくて。触れていると、つい抱き潰してしまいそうになる」

「腕、つらくならないですか?」

「全然。こうしていたいんだ」

 初日から何度も問いかけたけれど、高城は何度聞いても同じように言う。心地よいと言っていても、この男は私にこれ以上を望まない。

 きっと、私とは相性がよくなかったんだな。俺は君とちゃんと夫婦になりたいなんて言っていたくせに。
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