離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 頭を抱えた男性が「信じない。俺は信じないぞ。梅原さんは俺と結婚するんだ」とつぶやき、突如憤怒の雄叫びを上げる。

 男性のその異様な様に、私は怯えて高城の背中に身を寄せた。

「やっと梅原さんと話せたんだ。邪魔するな!」

 声を荒げる男性は拳を振り上げ、なりふりかまわず高城に殴りかかる。高城はそんな男性の腕を取り、捻り上げた。

「さっきから、お前。いったいいつから彼女につきまとっていたんだ」

 高城の凄みのある声が響く。

「あんたに関係ないだろ。あんたこそ彼女を妻とか言って、俺の梅原さんに触るな」

 高城に背中のうしろで腕を固定された男性は、痛みに顔をひきつらせながら言った。唇をゆがめ苛立ちをあらわにした高城が男性を突き放し、片手で私を抱き寄せる。

「俺のものだと? 笑わせるな。彼女は間違いなく俺の妻だ」

 痛いほどに抱きしめられた。恐怖に全身を強張らせていた私は、高城のシャツの胸もとを握りしめてすがりつく。高城もそれに応えるように、手のひらで私の頭を包み込んだ。

 男性が、声にならない悲鳴を上げているのが聞こえてくる。
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