離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「二度と彼女に近づくな。次に彼女の前に現れたら容赦しない」

 高城は、ひと際低い声色で打ち据える。次第に足音が遠ざかっていくのが耳に届いてきて、安堵した私は長い息を吐き出した。

 ふと我に返り、勢いよく高城の胸もとを押し返す。

 私、どうしてこの男にすがったりなんか。

 戸惑う私の顔を、高城が覗き込んだ。

「まつり。大丈夫? けがはないか」

「……はい。助けていただきありがとうございます」

「礼なんて言う必要ない。遅くなって悪かった」

 そう言った高城が、私の頬に触れる。やるせない面持ちを浮かべる男に、私はドキッと心臓が止まるような心地になった。

 一瞬でもこの男の存在に安心した自分が憎らしい。そう思うのに、なぜか胸は早鐘を打っている。
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