離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 * * *

「それではごゆっくりお過ごしください」

 お客さんのテーブルに注文された飲み物と料理を運び終えた私は、トレーを胸に抱え、カウンターの中へと戻ってくる。

 お昼過ぎのカフェの店内は、スーツ姿の会社員たちの姿が目立っていた。

 とくにこのビルの社員さんたちの中にはほぼ毎日うちを利用してくれる人も少なくなく、ほとんどの人が顔見知り、人によっては日常会話をするくらいに親しい人もいた。

 店内を見渡していた私は、出入口付近にあるふたり掛けのテーブル席を目に留める。この間まで毎日のように埋まっていたその場所は、今日は空席だった。

 カフェの男性客に追いかけられ、接触されてから二日が経った。

 高城に助けられたあと、どういう手段を使ったのかはわからないけれど、高城はあの男性を特定し、男性には警察から警告が行われた。

 警察により、しばらくは職場と自宅周辺の見回りも強化してもらえるらしい。
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