離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
「おう。お疲れ」

 そう言った郁実が、歯を見せて笑う。やって来たのは郁実だった。

「郁実、来てくれたんだ。店に来るのは久しぶりだね」

「最近仕事が忙しいんだよ。今日も残業になりそうだから久しぶりにここのコーヒーでも飲んで頑張うと思ってな」

 言い終えた郁実は、右手を反対側の肩に置いて首を回す。

「仕事大変なんだ」

 思えば郁実に会うのは、高城と結婚する報告をして以来だ。今までは月に一回はご飯に行って会っていたから、一か月以上郁実の顔を見ていないのは初めてかもしれない。

 私が結婚してから、私たちは恒例だった食事会の約束をしなくなった。

 ふたりで決めたわけでもないけれど、幼なじみと言えど男女がふたりきりで会うのはあまりよろしくないのではと思ったからだ。
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