離婚するはずだったのに、ホテル王は剥き出しの愛妻欲で攻めたてる
 高城は、持っていた手桶をその場に置く。

「まつり」

 心配そうに眉間にシワを寄せる高城が、私の肩を抱き寄せてきた。私は「離してください」とその手を振り払い、怒りで濡れる眼差しを向ける。

「どうしてあなたたちがここに……。私はあなたが憎くて近づいたんです。あなたに復讐したくて、父と同じ思いをさせるために結婚した」

 堰をきったように感情を吐き出す私に、高城が物悲しげに微笑んだ。

「知っていたよ」

 その言葉に、私は驚愕して小さく声を上げる。

「最初から全部わかってたんだ。まつりがかつてうちと取引のあった『あいの豆腐店』の娘なのも、俺を恨んでいることも」

「……嘘。それならどうして結婚なんか」

「俺は、君を救いたかったんだ」

 私を救いたかった? 本当にすべてを知っていたというの?

 苛立ちが頂点に達し、私は爪が食い込むほどこぶしを握りしめる。
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